今回のコラムは「告知事項」についてです。
物件を探している時にチラシで見る、端の方に小さく書いてあるアレです。(笑)
「告知事項あり。」
このワードを見るとなんだかザワザワしますよね。中にはお好きな方もいるようですが。
今回は、この「告知事項」について少し真面目な専門的なお話。
先日書いた、活動コラム「宅建士更新」の法定講習で出た「人の死の告知に関するガイドライン」についてシェアしたいと思います。
まずは、このガイドライン策定に至るきっかけとなる事例が紹介されています。
下記、簡単に紹介します。
事例
・賃借人A(入居者)が賃貸アパートの室内で自殺した。
・賃貸人X(大家さん)は、Aさんの連帯保証人Yさんと相続人Zさんに損害賠償を請求した。
・請求内容
自殺のあった部屋、その両隣・階下の部屋については、今後その事を説明せざるを得ない
として、約6年分の賃料減少分を主張した。
結末(裁判所の判断)
1・賃貸人は保証人や相続人に損害賠償請求が可能である。
2・1年間は賃貸出来ず、2年間は賃料が半額、3年後には従前の賃料で賃貸可能と推認するの
が相当である。
3・自殺のあった部屋については、1年の賃貸不能期間の賃料分と2年の賃料減額分の損害賠
償を認める。
4・他の部屋(両隣や階下の部屋など)を新たに賃貸するに当たり、賃借希望者に対して自殺
を告知する義務はない。
5・両隣の部屋や階下の部屋については損害賠償は認められない。
これを機に、「身内や保証人となった人が自殺したら損害賠償される」と言う事と「他の部屋については告知義務無し」と言う認識が広まったと言うことでしょうか。
そして、令和3年10月に国土交通省が発表した「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」について、見ていきましょう。
まず、補足です。
・「告知しなくても良い場合」の例ですので、下記以外の場合は告知されると言う事です。
下記の事例でも嫌だ・気になると言う方は1件づつ質問する事をお勧めします。
・このガイドラインが適用される範囲の不動産は「居住用不動産」が対象となっています。
1・自然死や日常生活での不慮の死(転倒事故、誤嚥等が発生した場合)
原則:賃貸借契約及び売買契約共に告知義務無し。
*死体放置等により特殊清掃や大規模リフォームが行われた場合を除く
2・他殺、自殺及び特殊清掃等が行われた「1」に該当する死
賃貸借契約においては、概ね3年経過後は告知義務無し。
売買契約においては、経過期間のみで告知不要とする扱いは想定されていない。
相手方の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる場合には告知の必要あり。
3・隣接住戸、日常生活において使用しない集合住宅の共用部で発生した「2」に該当する死
原則:賃貸借契約及び売買契約共に告知義務無し。
*事件性、周知性、社会に与えた影響が大きい場合は告知の必要あり。
例外
・上記以外の場合(グレーゾーン)は、相手方の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる場合
・買主、借主から事案の有無について問われた場合
・社会的影響の大きさから買主、借主において把握しておくべき特段の事情があると認識した
場合
調査方法
人の死に関する事案を疑わせる特段の事情がなければ、聞き込みやインターネットサイトの調査などの自発的な調査は不要。
告知方法
・下記について告知する。
1:発生時期(特殊清掃等が行われた場合には発覚時期)
2:場所
3:死因(自然死、他殺、自死、事故死の別。不明である場合にはその旨。)
4:特殊清掃が行われた場合にはその旨
・売主、貸主、管理業者に照会した内容をそのまま告げる。
不明と回答された場合、無回答の場合には、その旨を告げれば足りる。
・告げる際には、死亡者・遺族等の名誉・生活の平穏に配慮し、氏名・年齢・住所・家族構成
や、具体的な死の態様、発見状況等を告げる必要はない。
以上が、ガイドラインの内容です。
今回は、消費者側ではなく宅建業者側からの目線でのお話になりましたが、逆の見方として、どの様な場合であれば黙っていても告知されるのか? 積極的に聞かないと教えて貰えない範囲。そして、聞いても教えて貰えない事とはどんな事なのかを、予め腹積もりして物件探しにのぞむと良いのではないでしょうか。
少しでも、参考になれば幸いです。
個別に具体的な質問や相談がある方は、いつでもお気軽にお問い合わせください。
それでは、また、次回のコラムで。